「ドイツ旅行をしている様な気分でビールを楽しんでいただけると思います」
麦麹を使ったクラフトビール!?
BANSHAKU編集部は日本全国各地のブルワリーを探索する中、またしても面白いブルワリーを見つけてしまいました。それは今回ご紹介する”オリゼーブルーイング”。
麹を主原料としたビールを製造する世界初のブルワリーです。ブルワリー誕生の背景からビールまで代表の木下さんにお話をお聞きしました。
今回の登場人物
BANSHAKU編集部戸川(以下、BANSHAKU戸川)
編集部随一の音楽通。趣味は音楽とお酒、AirPodsとは親友であり渋谷のタワレコに頻繁に出没する。
オリゼーブルーイング 代表取締役 木下さん
麹と細野晴臣を愛する元ベーシスト。最近はアナログシンセで遊ぶのが趣味。
オリゼーブルーイング誕生の道のり
まずはクラフトビールを造り始めるまでの経緯を教えてください。
少し長くなってしまうのですが、私は大学を卒業してから和歌山県湯浅町にある醤油屋に勤めていました。当時はバンド活動もしており、デビューを夢見て2、3年ほど働いてから上京したのです。吉祥寺を中心に活動をしてデビュー手前までいきましたが結局は夢叶わず、音楽活動を辞めました。
それから私の嫁(当時の彼女)が熊本におりまして、都会に疲れていたこともあり熊本へ行きました。熊本では味噌や甘酒を造る会社に就職し麹のことを詳しく学びました。九州には”麦味噌”と言う文化があるのですが、ここで初めて”麦麹”と出会ったのです。しばらく味噌と甘酒を造る経験を積んでいたのですが、製造の際に廃棄してしまう甘酒が多いときには1日に数十リットルほど発生してしまい、もったいない、何かに利用できないかと感じるようになりました。
その後、福岡の造り酒屋に転職したのですが、分析作業中にアルコール5%ほどの清酒モロミを濾過すると飲みやすくなることに気づき、甘酒をろ過して酵母を入れてみると面白いんじゃないかと思ったことがきっかけの1つです。それからお酒造りの事業を起こすために今から7年前に和歌山県へ戻りました。
和歌山では初めに甘酒を濾過した”ニンジャエナジー”という商品をインターネット上で販売する事業をおこないました。その後、コンブチャ(紅茶キノコ)事業もスタートし、ビール造りをおこなうための事業資金を貯め、昨年ようやくクラフトビール事業(発泡酒)を開始できるようになりました。
麦麹を使ったクラフトビールとは
クラフトビールはどのように造り始めたのですか。
実際にレシピ作成自体は3年ほど費やしました。ビールの元となる甘酒の試作を造っていたのですがなかなかうまくいかず、特に麦麹を使った甘酒が非常に難しかったです。
それまでは味噌の麦麹を使っていたのですがえぐみが出てしまい、満足することができませんでした。しかしやっと九州で、とある品種の麦を見つけまして『これいけるな』と感じ、いろいろと苦戦しながらも商品を開発することができました。
紆余曲折があって今に至るのですね。ビールについて教えてください。
現在は3種類のビールを造っています。まずは”ORYZAE PALE ALE”から紹介します。主原料が麦麹で、掛け合わせている原料も麦で造ったビールになります。麦芽のビールとは異なり甘酒を手作業で搾る作業をおこない、麦汁を取り出しています。
味わいとしては麦麹とホップの香りが合わさった、ちょっと複雑な香りになるのですが、お客様からは『とてもフルーティーだね』とおっしゃっていただいています。味はアミノ酸やグルタミン酸の旨味成分があるので、味噌汁等と共通項のある複雑なビールですね。
次に、”JAPANESE WHITE No.9”に関しては、米麴を使っているビールです。清酒に近い原料や清酒酵母を使うことで味わいが白のスパークリングワインのように感じます。
また、お客様から『もっと苦いビールがほしい』とご意見をいただき、”ORYZAE IPA”を造りました。JAPANESE WHITE No.9と比べていただくと、米汁は全く同じ製法で造っているのですが、ビール酵母とホップはドライホップで仕上げているので全くキャラクターが違います。爽快でパイナップルのような香りがするスカッとしたビールになります。
ビールに合わせたフードペアリングのおすすめはありますか。
ORYZAE PALE ALE はアミノ酸やグルタミン酸があるので、揚げ物やお肉料理と合わせるのがおすすめです。JAPANESE WHITE No.9 はお刺身がおすすめです、淡白な味わいを邪魔しません。ORYZAE IPA はハンバーガーと合わせるのがおすすめですね。
最後にメッセージをお願いします。
一般的なクラフトビールとはだいぶ毛色が違いますが、麴を使った新しいスタイルをお届けしたいなと思っています。副原料として麹を使うビールは数社ほど出始めていますが、麹だけで出来上がったビールで『これがジャパニーズスタイルのビールですよ』と自慢できるビールを造りたいです。
Director’s Voice
通常のビールは麦芽、ホップ、酵母、水で造るのが基本である中、麦芽を使用していないブルワリーとしてオリゼーブルーイング独自のクラフトビールを生み出し続けているのは、非常にCRAFTを感じるブルワリーでした。チャレンジングな商品開発を今後も応援していきたいです。
Junki Tada
オリゼーブルーイングについて
住所 | 和歌山県和歌山市舟大工町3 きのしたビル |
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TEL | 073-488-6280 |
公式サイト | https://oryzaebrewing.com/ |
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