ON TAP 江戸東京ビール / 東京都

「大手ではできないようなチャレンジングな味のクラフトビールを作りたい」

「大手ではできないようなチャレンジングな味のクラフトビールを作りたい」

こんにちは、BANSHAKU編集部の多田です。BANSHAKU取材記事第1号として、今回は東京都江東区千田にある、ON TAP 江戸東京ビールさんにお邪魔して、クラフトビール造りにかける想いをヘッドブルワー高 浩嗣さんにお聞きしてきました。

  1. ビール品評会審査員からブルワーへの歩み
  2. ビール造りへのこだわりと葛藤
  3. ブルワリーの名前の由来。江戸東京野菜を使ったビール造り
  4. 江戸東京ビールの”らしい”飲み方とは

ビール品評会審査員からブルワーへの歩み

−まずはじめに、いつ頃からビール醸造家になりたいと考えていたのですか。

大体2016年ぐらいになりますね。計画と言うか。ぼんやりなんとなく思っていました。

元々、前職も飲食をやっていたので、お客さんに対しての接客として商品知識を入れようと思って勉強していたのですが、ビールの他にもカクテルやウイスキーも勉強してました。その中で自分の体質に合うのがビールだったんです。体質的に悪酔いしないというか体に合う感じがする。体に負担を感じないのがビールといった感じで。もちろん味も好きですけど。

2015年にビアジャッジの資格をとりまして、ビールの品評会が行われる際に審査員としての資格ですね。当時、アジア・オセアニアを中心としたビールが出品されるアジアビアカップとインターナショナルビアカップ。両方世界大会なんですけどその審査会で審査員をしていました。

審査会に参加するようになって、審査会は結構過酷というか、やっぱり人の作ったものを評価するってすごい大きな責任を伴うと感じて。そういう中でもっと自分でも知識を入れていかないと審査できないと感じていました。

周りで「ビール造りやってみたい、やりたい人いないか」みたいな話もあって、ちょっとそういうところで人が集まって、だんだんと今度は作ってみようかなとか、作ってみたいなと気持ちが変わっていきました。飲食やっていたのでその延長線上でクラフトビール造りが始まりました。

−クラフトビールの醸造となると酒税や免許取得など大変なことが多いのではないですか。

飲食業界に入った時から、ブルーパブをやってる人が周りにいて、色々条件が厳しかったり、特に法律ですね。酒税とか厳密にやらないといけないことは知っていました。ふつうの飲食店を開業するよりも難しいことは知っていました。

−そういった背景を知りつつもやりたかったのですね。

そうですね。自分一人だったらやらなかったです(笑)周りに「やろうよ」とか、「やってみない?」っていう人たちがいてやってみようかなと思いました。全部一人で立ち上げからやっている方は尊敬しています。

−具体的に大変だったエピソードを教えてください。

2016年になんとなくビール造りを仕事としてやろうかと空気が醸成されてきて、最初に資金が必要で、何かないかなということになって、ものづくり補助金という国がやってる補助金があることを知ってこれを利用しよう考えたんです。

ものづくり補助金は、革新的なサービスや新しい事業に対して、国が補助金を出してくれるというものでして、こういうブルーパブをやるという事業計画書を提出して、運よく採用されました。それが開業の助けになっています。

2016年度の予算で採用されて、その事業計画書が通って実際に動き始めたのは2017年でした。そこから免許の申請を行なったという流れです。お店がオープンしたのは2018年3月でもうすぐ2周年です。3月あたまにオープンして3月9日付で免許が交付されたんです。

実際にクラフトビールの仕込みを始めたのは4月6日からだったと記憶しています。ビールが仕込んでからだいたい飲めるようになるまでは一か月以上かかるので、3月にオープンしたお店で、ここで作ったビールが最初に提供され始めたのは4月の末でした。確かゴールデンウィーク頃だったと思います。

ビール造りへのこだわりと葛藤

−最初に仕込まれたビールは今も提供されているのですか。

今はもう前のレシピは作ってないですね。また作りたいのですが、最初に作ったビールは、自分としては改良していきたいんです。

ただ、その時最初に飲んでくれたお客さんとしては、最初のビールっていうことで印象が強くて、あれと同じものを飲みたいとご要望が大きくて。なのでそれを変えたものというか、今ちょっと冷却期間というか塩漬けというか。自分としては、今は前よりも良いものが作れるという自負があるので、ちょっと変えて出したいんです。

−お客さんの好みもありますよね。

そうなんです。そのときのお客さんは昔のままでもいいと言ってくれていて。同じ仕込みで何回か作ったんですが、最初がよかったという声が多くて。

−今後最初のレシピの提供をされる計画はあるんですか。

全く同じレシピのビールはやらないです(笑)

−だいたい初めての仕込みから2年間で、どのくらいビールの仕込みをされたんですか。

1月末の時点でだいたいオープンしてから120回くらい仕込んでいます。

−最初のときよりもどんどん改良しているということですね。

どんどん変わっていますね。

−今提供されているメニューは何種類くらいですか。

今は6種類から7種類ぐらいですね。定番は丸2年やってみて、だいぶレシピが固まってきていて、とりあえずいじらなくてもいいかなって思っています。レシピのストックがいくつかできています。

4月から定番商品5種類ぐらい、月替りとか季節ものとかで出していくような商品を毎月1種類か2種類ぐらいだしていこうと思っています。なので基本的に定番品もあるけど、たまに1ヶ月に1回ぐらい来てみたらラインナップは変わってる。みたいな感じです。

−定番だとどのようなメニューがあるんですか。

定番だとまず千田ゴールデンです。ここの住所が江東区千田ですので、その名前を付けたものですね。これはアメリカンスタイルのペールエール、もしくはゴールデンエールといわれるものです。

もう一つがトーキョーESBというビールで、ちょっとこれもトーキョーって固有名付けちゃったんですけど、千田ゴールデンがアメリカンスタイルのビールなのに対して 、ESBはイングリッシュスタイルと呼ばれるビールですね。だいたいこの二つは定番であります。

IPAに関してはホップを変えたりとかして、今月のIPAのような月替わりか季節変わりで出していこうと思っています。

ブルワリーの名前由来。江戸東京野菜を使ったビール造り。

−ビールの名前の由来は地名から取られることが多いのですか。

そうですね。そもそも江戸東京ビールの名前からしてそうなんですけど、僕の考えだとやっぱり地ビールまたはクラフトビールっていうのは、どこで作られているかっていうのと、誰が作っているかっていうのが、買ってもらう時、飲んでもらう時、すごく大きなきっかけになると思っているんです。

例えば、お店で飲むときもそうですし、フードイベントにブース出店する時とかも、北海道ビールとか沖縄ビールとか、50とか100くらい沢山のブースが並んでる中で、自分は北海道出身、沖縄出身だったらまずこの北海道ビール飲んでみようかなとか、沖縄ビール飲んでみようかなとか、そこがファンになるきっかけになると思ってるんです。

僕はブルワーとしては成り立てなので、ブルワーとして名前が知られてるということはまだないので、どこで作ってるかってことは重要だなと思って東京っていう名前をつけました。

話は戻るんですけど、江戸東京ビールっていうのは、先ほどの補助金を取った時のテーマになっていて、単純にブルーパブをつくるのではなくて、江戸東京野菜という地野菜を使ったビールを作りますよって計画でスタートしているんです。実際に東京の地野菜を使っていてそこからも江戸東京ビールの名前の由来が来ていて、ほかにも江戸東京ビールにはいろんな意味があるんです。

江戸東京野菜というのは京野菜みたいな感じで、江戸野菜にしても良かったのですが、江戸から明治維新が起きて今の政府になった時に東京というのがだんだん地理的に広がったんですよね。例えば八丈島とかも東京になりますよみたいな。でも江戸っていうのは江戸城を中心に今の東京の一部が江戸だった。だからその地域的な広がりみたいなのを表していて、江戸もしくは東京の地域に属している野菜ということでできてきたんです。

江戸東京ビールというのに関して言うと、僕はその時間の流れと言うか、あの江戸みたいな職人肌みたいなイメージとか、あと温故知新て言うんですかね、古きをたずね新しきを知るのと、東京という最先端でちょっと華やかなイメージ、その両方のビールを作っていきたいなという想いです。

なのでいろんな意味でどこで作っているかが重要というのと、その作りたいビールのコンセプト、実際作るビールに使われる素材、3つの要素で江戸東京っていう言葉を選んで作りました。

−それでは今作っているビールは地野菜を使っているビールなんですね。

そうです。季節によって変わります。

江戸東京ビールの”らしい”飲み方とは

−高さんのビールはどういう人に飲んで欲しいですか?

そうだなあ。難しいですね。そうだなあ(笑)「僕はこういうビールが好きだけどどう思いますか」っていう感じで作っているんですよ。

例えば、「あなたに向けて作ってます」という感じが本当はかっこいいのかもしれないんですけど。「僕はこういうビールが好きです。いま世間で流行っているビールとはちょっと違うかもしれないけど。僕はこういうビールは好きだと思います」っていうのを提示して「はい好きな人いますか?」って感じで。

大手のビールに比べて、クラフトビール、地ビールっていうのは好き嫌いが分かれていいと思っていて。ちょっとしか作れないし、作らない。味のブレもあるし、大手ではできないようなチャレンジングなことをしてたりとかね。

まぁ万人受けするようなビールでなくてもいいと思っています。「僕の好きなビールはこんなんだけどまあ好きになってくれたら嬉しいな」って感じですね。ごめんね、ちょっとずれちゃったです(笑)

−ありがとうございます。このビールはこの料理やおつまみと合うなとか、ペアリングはありますか。

そうですね。うちのビールでいうと基本的になんですが、香りがすごく強いとか味がすごく濃いってあんまりないんですよね。それって何かと言うと料理を楽しんでもらいたいので、ビールだけ飲んで味が強くて濃くて満足してもらうというよりかは、料理とビールを楽しんでもらってそれで1セットと言うか。

それで言うとESBとかでしたら鶏の半身揚げとか、千田ゴールデンとかはスターターとして一杯目とかでもいいですし、いろんな料理に幅広く合うかなと思っています。

Director’s Voice

実は編集部多田は高さんと地元が近く、お店で提供されている鶏の半身揚げが北海道小樽名物ということで、取材のあと懐かしの味を噛み締めながら、トーキョーESBをいただいておりました。またお邪魔させていただきます。取材ありがとうございました。

Junki Tada

今日ご紹介させていただいた、ON TAP 江戸東京ビールさんの情報はこちら

店舗名ON TAP 江戸東京ビール
住所〒135-0013
東京都江東区千田16-2
TEL03-6659-8379
MAILcontact@edo-tokyo-beer.com
職人インタビュー 2020.03.02
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