ビールの4大原料「麦」「水」 「ホップ」「酵母」

ビールの4大原料「麦」「水」 「ホップ」「酵母」

今回の登場人物

酔生夢死子(よみ:すいせいむしこ)
ライター・デザイナー時々ミュージシャン。10年会社員を務めた後、フリーランスに転向。現在は気の向くまま、思うまま、酔いと共に日々を過ごす。「できないことはできない。しない。」がモットー。

世界中でいろいろなクラフトビールが飲めるようになった今日この頃ですが、やはりその基本の基は、麦、ホップ、水、酵母。

ドイツの法律、“ビール純粋令”にも「ビールは大麦、ホップ、水、酵母のみを原料とすべし」とあるように、これらを原料としたものが”ビール”と呼ぶにふさわしいでしょう。今回は、この4つがビールのどんな役割を果たしているのか、それぞれ解説していきましょう。

  1. 麦芽:ビールのキャラクターを決める!
  2. 水:ビールの品質を決める!
  3. ホップ:苦味と香りの請負人
  4. 酵母:アルコールと炭酸は酵母が作る!
  5. まとめ

麦芽:ビールのキャラクターを決める!

ビール造りにおいて、最も重要な原料が麦芽(モルト)です。麦芽(モルト)とは「発芽しはじめた麦芽を乾燥させたもの」のこと。では、なぜわざわざ発芽させるのでしょうか。実はこれ、のちのちアルコールや炭酸を造る工程でとても重要なポイントとなるのです。

発芽前の麦はその成分のほとんどがデンプンです。このデンプンの組織は、がっちり繋がれた鎖のチェーンのようなもので、このままではうまく発酵させることができず、アルコールが生まれません。しかし、発芽させることで酵素が造り出されこれがデンプンのチェーンを外し、アルコール造りに必要な糖を生み出します。麦は多くの穀物の中でも、デンプンを糖に変える力が勝っていたため、ビール造りに重宝されるようになりました。

発芽させた麦はその成長を止めるために焙燥(麦芽を渇かすこと)されます。この焙燥をどのようにするかでビールの色が決まります。さらには焙焦(高い温度で焦がすこと)といって高温で焦されたモルトを造ることもあります。このモルトを使ったビールの色は濃く、コーヒーのような香ばしい香りを持ちます。主なモルトの種類を紹介いたします。

●焙燥モルト

◆ピルスナーモルト:85℃で焙燥。酵素力が非常につ強い淡い色のモルト。

◆ペールエールモルト:85~90℃で焙燥。エールのベースモルトになることが多い。酵素力も高い。

◆ウィーンモルト:90℃~100℃で焙燥。薄く焦げ色がつき、赤みを帯びた色のビールがでできる。

◆ミュンヘンモルト:100~110℃で焙煎。麦芽風味の豊かなビールに仕上がる。

●焙焦モルト

◆クリスタルモルト:120~160℃で焙焦。麦芽の一部がカラメル化し、最終的に残糖となってビールに甘みとボディを与える。

◆チョコレートモルト:200~220℃で焙焦。チョコレートやナッツのような色味と風味を与える。

◆ブラックモルト:220℃で焙焦。真っ黒に焦がされたモルト。多く使用するほどドライな香りになり、ボディは暗めになる。

◆ローストバーレイ:220~230℃で焙焦。発芽させていな麦をローストしたもの。かなりシャープな味わいになり、色は不透明な黒。

水:ビールの品質を決める!

ビールの90%を占めているのは水。最終的な質は水が決めると言っても過言ではありません。ビール造りで水をナメると危険な目にあいます!水の要素として最も影響するもので”硬度”があります。硬度は水に含まれるカルシウムとマグネシウムの合計含有量のことで、これが多いものを”硬水”、少ないものを”軟水”と呼びます。

水の硬度はそのまま「硬い味」、「なめらかな口当たり」など、ビールの飲み口に関わってくるほか、醸造の過程で酵素や酵母の活性に影響を及ぼします。一般的に硬水は色の濃いビール、軟水は色の淡いビールに適しているといわれています。

イギリスの中部、バートン・オン・トレントで生まれたエールビールの代表格といえば”ペールエール”。このビールはこの地に流れる硬水に含まれるミネラルや硬度が、麦とホップにあまりに適していた事から偶然生まれました。原料の旨味をしっかり引き出すためにも水の品質はとても重要なのです。

ホップ:苦味と香りの請負人

ホップはアサ科のつる性の多年草植物で、ビールの苦味と香りの源になります。この植物には雄株と雌株とがあり、ビールの使われるのは雄株につく未受精の房(毱花)だけです。房の中には”ルプリン”いう小さな黄色い粒があり、これがビールの苦味と香りの源となるのです。

こちらの記事にも書いたように、ビール発祥の頃、ホップは使われていませんでした。

しかし、ホップが果たす4つの効果が非常にビールに適しており、今では欠かせないものとなりました。その4つとは、以下のものになります。

①【心地よい苦味】

ホップを麦汁に加える際、苦みの成分フムロンが水に溶けやすいイソフムロンに変化します。このイソフムロンがビールの苦みになります。

②【爽やかな香り】

ビールの香りは発酵過程で酵母が作り出すものですが、原料の麦芽やホップによって大きく作用されます。特にホップは品種によって香りが異なり、アロマホップなどはビールに爽やかな香りを与えます。

③【泡立ちの良さ】

ビールの泡はホップに含まれる苦み成分(イソフムロン)が、大麦由来のタンパク質と結合することで形成されます。苦みが強いほどビールの泡持ちが良いと言われています。

④【防腐・殺菌効果】

ホップには雑菌の繁殖を抑え、ビールの腐敗を防ぐ効果もあります。殺菌技術が普及する以前はとても重要視されていた効果です。ホップの品種は100以上ともいわれ、今なお新しい品種が生まれ続けています。

ホップをよく使った有名なビアスタイルの1つに”IPA”というものがあります。以前、BANSHAKU編集部和田さんがIPAの記事を書いているので気になる方はこちらをご覧あれ。

酵母:アルコールと炭酸は酵母が作る!

ビールだけでなく、日本酒やワイン、ウィスキー、この全てに酵母は欠かせない存在です。酵母がなければアルコールは生成されずお酒にならないのです。麦汁に酵母を加えると糖を分解する”発酵”が行われます。ちなみにこの段階で、ビールの深みや味わいといった副産物も造られます。この発酵の後、熟成期間を終え私たちが普段味わっているビールへと仕上がっていくのです。

ビールは基本発酵の”上面発酵(エール)”、”下面発酵(ラガー)”、”自然発酵”の3つに分けることができます。

①【上面発酵(エール)】

上面発酵酵母(エール酵母)は16~24℃ぐらいの温度で活動し、発酵期間は短くだいたい3~6日ぐらい。発酵が進むと麦汁の上部に酵母が浮き上がる性質を持っています。この上面発酵酵母による発酵の特徴としては副産物が多く、フルーティーな香りやエステル香と呼ばれる香り(バナナに似た香り)がつき、全体に奥深い味わいになります。

②【下面発酵(ラガー)】

下面発酵酵母(ラガー酵母)は4~10℃くらいの温度帯で活動し、発酵期間は長めで6~10日ぐらい。発酵が進むにつれて、タンクの底の方に沈降していく酵母を使っているため、下面発酵と呼ばれています。この酵母による発酵の特徴は、副産物が少なくキリッとシャープな味わいのものに仕上がることです。上面発酵酵母は紀元前6000年頃に発見されましたが下面発酵酵母の発見は15世紀なので新しい発酵技術と言えます。

③【自然発酵】

上の二つが基本の発酵となりますが、その他にも自然発酵というのがあります。これは培養管理されていない、空気中に存在する酵母を使う方法です。煮沸後の麦汁を涼しい空気に直接さらして冷却し、自然界に生息する野生の酵母を根付かせ発酵させます。この野生酵母で造られた有名なものでは、ベルギービールの”ランビック”があります。

まとめ

今回はビールに重要な4つの原料を紹介してきました。たった4つなのにどの原料をどのように仕上げ、どれと組み合わせるかでビールの味は変わってきます。無限大に広がるビールの世界。これからの進化も見逃せません!

ビールの醸造工程をもっと知りたい!という方はこちらの記事にまとめてあるのでおすすめです。

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コラム 2020.06.28
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